『月天の太陽』
深山朴子(29歳)
作品紹介
美しく輝く空にもかつて、戦争があった。空に憧れた少年たちは、陸海軍の飛行機搭乗員になった。戦争は悲惨だ。だが戦争に従事した人々は悲愴のみで生きていたのだろうか。少なくとも空の荒鷲たちはユーモアを楽しみ、冗談口を叩いて笑い合う。笑い合った友の屍を乗り越え、敢然と生死に立ち向かったのである。血沸き肉踊る戦闘もよい、緻密な頭脳戦略もよい。だがこれは、元気一杯に誇りを抱いて空を駆った飛行機乗りたちの青春を描いたものである。
寸評
戦死者の遺品回収という職業を考えたのはおもしろい発想だったが、その部分が生かされていないので、ファンタジーにした意味がなくなってしまった。平凡なエピソードが多く、構成も単調だったため、長く感じられ、主題もわかりにくくなってしまっている。(編集長Y)
比較的リアルな戦時下という設定と、登場人物のキャラクターの軽々しさが、なんだかとてもミスマッチ。そこに強い違和感を感じた。物語の雰囲気、世界観をしっかりと見据えて描いて欲しい。(編集N)
太平洋戦争下の若者たちを明るく描きたいという作者の意図はいいと思ったし、それがこの作品のユニークさにつながっていると思う。実際、彼らも冗談を言いあったりしていただろう。だが、やはり、この作品のキャラクターや会話の軽さには違和感が拭えなかった。特攻のシーンに「悲壮な興奮」みたいなものをほとんど感じなかったのも、そのせいだろうと思う。極論すれば、「事実がどうであったか」ということよりも、読者が期待する雰囲気、みたいなものを裏切らないようにするのも、サービスとして必要なのかもしれない。(編集O)
戦争をテーマにしているが、よくあるような悲惨さより、青春に重きをおいたところがよかった。しかし設定にやや無理があり、リアリティが感じられない上、感情移入もしにくくなってしまっているのが残念。(編集F)
全体の流れの起伏が少し乏しく感じられた。登場人物との関連や構成などはよく考えながら描いている印象があるが、文章のボリュームの割には伝わり感が小さく感じられた。登場する人物像、構成の肝になる部分などをもっと印象づけるようなものを持たせてほしい。(編集S)
何かが起こるまでが長い。山がない。この作品はフィクションとはいえ、作中に書かれる戦場の名前などは実在する場所なのに、あまりにもそこでのんびりとしたやりとりをされては読者は拍子抜け。これならいっそ、全てをフィクションで書かれたほうが入り込める。(編集A)